日常の芒

なんてことない日々に、少しの刺激を

秋田県の話。

旅にのめり込み始めていた頃、関東、北陸、中部…と近隣の県をほぼ制覇する中、東北でそこだけぽっかりと空くように未訪問だった秋田県

正直なところ、東北で銀山温泉と肩を並べる雰囲気抜群の乳頭温泉郷「鶴の湯」くらいしか興味をそそられず、なかなか行く機会…行きたい理由がなかった。

 

2020年3月、新型コロナウィルスが広がり始め、世間では出歩くのが不謹慎とされ始める中、私は春分の日が絡まる3連休の旅先を探していた。

そんな中で、「近隣で一番感染者数が少ない県」という不謹慎な理由から秋田県へ行くことになった。

 

 

秋田ふるさと村」に寄り、「横手やきそば」を食べるところからスタート。

人気の施設、人気のお店のはずがどちらも閑散としていた。

 

 

田沢湖を通り、憧れの鶴の湯へ。

感染症が蔓延るご時世、山奥にも関わらず、賑わいを見せていた。

混雑に加え混浴というのもあり、私はここで引き返した笑

 

 

この近隣、突発な連休に宿泊できるのは乳頭温泉郷にある休暇村だけだったが、雪のちらつく白濁した温泉に、偶然ブロンド髪の海外の方が三度笠を被り入ってきたときにすごく風情を感じた。

いぶりがっこを始めとし、夕食の姫竹やきりたんぽのホイル焼き、朝食のせり汁等食事も大変美味しかった。

 

 

秋田の食、といえば自分がイメージするのはいぶりがっこときりたんぽだが、次点で思いついた比内地鶏

正直なところ、当時はサシの入っているようなブランド牛は高級感を感じるものの、豚肉と鶏肉のブランドは名前をとってつけただけのようなものと甘く考えていた。

「秋田比内や」の比内地鶏の親子丼。

比内地鶏…その強烈な弾力と脂の濃厚なうま味にすぐに考えを改めることになった。

 

 

個人的に刺さった、他の県では余り見ることがなかったパウチジュース。

りんごだけでもたくさん種類があり、安価でまた嵩張らないのが気に入って色々な種類を試し飲みした。

 

 

初めて行った寒風山はすばらしい眺望だったが、3月の寒風山はまさに「寒風」山だった笑

 

 

大館の本店で買った「花善」の「比内地鶏の鶏めし」。

通常のものより少し高価だが、付け合せも含め何度も食べたくなる、個人的にトップに君臨する駅弁。

 

 

大館に行った際、一気にその味の虜となった比内地鶏

そのスープを使ったラーメンはたいそう美味しいのでは…と秋田市内で探してみると、ちょうど朝の10時から開店しているお店があった。

「ひない軒」の「地鶏ラーメン」。

事前に下調べしておらず「秋田市内で」「地鶏のスープで」「朝ラーで」とたまたま条件にあった店が運命の出会いだった。

黄金色に輝く濃厚な地鶏のスープに溺れ、今では秋田に行く際には必ずといっていいほどこのお店に寄る。

 

そんなこんなで初の秋田旅は「比内地鶏」に心を掴まれっぱなしの3日間となった。

 

 

翌年、「水沢温泉郷」の「駒ヶ岳温泉」へ。

キャンセルか何かでたまたま土曜日の枠が空いていたらしく、すかさず予約し憧れの貸し切り露天を満喫した。

 

 

夕食では、八幡平ポークの陶板焼を始めとする地のものを使った料理に舌鼓をうつ。

 

 

「山の芋鍋」も大変美味で、最初からごはんが出ていたのにしめに蕎麦が出てきたのも驚いた笑

 

 

こちらの「駒ヶ岳温泉」は「鶴の湯」の姉妹館で、夕食後に鶴の湯までの送迎バスが出ており、日帰り客のいなくなった温泉をゆっくりと堪能できる。

 

 

朝ごはんも美味しくて印象的だった。

比内地鶏の卵かけごはんを始めとし、たくさんのごはんのお供が少しずつ並ぶ、「白米のための」朝食。好きだ。

 

貸切露天も2つある良い温泉に夜の鶴の湯まで行けて、素晴らしい食事がつき9000円。破格も破格である。

 

 

駒ヶ岳温泉の帰りに寄った稲庭うどんの有名店「佐藤養助」。

その喉越し…稲庭うどんもまた、比内地鶏のように最初と食べたあとの印象が覆った。

 

 

2021年のGW、感染拡大と悪天候により西側への遠征を諦めた私は、唯一晴れ予報だった男鹿半島へ向かった。

道中で通った大潟の菜の花ロード。

タイミングによっては両脇に桜も咲くとのこと。いつか黄色と桃色が飾るこの直線を走ってみたい。

 

 

今までの秋田旅は曇天ばかりだったので、初めての青空が見せる男鹿半島の美しさに息を呑んだ。

 

 

こんな機会はなかなかない、と男鹿半島に留まり「ゴジラ岩」越しの夕陽を拝むことができた。

 

 

夕陽を見たことで時間的に夕食は諦めていたが、コロナ禍というのもあってか人気店「本家あべや」に入ることができた。

比内地鶏は正直なところ高価だが、それだけの価値があるのは実食済みだ。

 

 

中でも「比内地鶏の水炊き」、最後に色々な出汁のでた濃厚なスープはたまらなかった。

 

 

別日、憧れていた温泉に行くため再度大館を訪れ「秋田比内や」に再訪。

親子丼をセットで頼むと、チョロギやしそ巻、とんぶり等の地元食材の小鉢がついていて嬉しかった。

 

 

憧れの温泉、玉川温泉

人里離れた山の中にあるこの場所は、空気や時間の流れの違いを感じる。

 

 

自炊部に宿泊し、大館で買ってきたおなじみのお弁当をいただく。

良い温泉と、世間から隔離されたようなこの最高の空間でいつか自炊をしながらゆっくりと湯治をしてみたい。

 

 

2021年の10月、また男鹿半島に訪れていた。

初めて訪れた男鹿水族館「GAO」。

シロクマがなにか訴えかけるような目でこちらを見ていた。

 

 

こちらも初めての「なまはげ館」。

たくさんのなまはげに囲まれた広い空間では、少し怖さを感じるようで、見守られているような神秘的な感覚もある。

 

 

このときの目的は、寒風山に揺れるすすきの群生であった。

「鬼の隠れ里」付近で美しい芒原を長め、「姫ヶ岳」に登り夕陽が沈むのを見届けたかったが雲と山に隠れてしまった。

 

 

予定にはなかったのだが、翌朝ある期待を胸に3時にホテルをチェックアウトし、再び寒風山へ訪れた。

 

 

時間とともに雲が流れる。朝日に照らされ穂が黄金に輝いた。

八郎潟を見下ろす眺望、そして「日本海側から見る朝日」がこんなにも美しいだなんて。

 

 

絶景に感動し、先の予定を忘れ男鹿半島を走った。

 

 

寒風山からの帰りにいただいた「たいあん弁当」の唐揚げ弁当。

蓋の締まらないこの盛りでワンコインとは恐れ入る。

近くに住んでいたら毎日のようにお世話になるだろう…。

 

 

2022年、梅雨を彩る青い花を見に再び男鹿半島へ訪れた。

 

 

青一色で揃えられた男鹿半島「雲昌寺」のあじさい。

 

 

好きな土地はいつも自分に素敵な景色を見せてくれる。

終日曇り予報の中、一瞬だけ青空が覗いた。

公式HPが謳う「極楽青土 Blue Heaven」とはまさにこのことであった。

 

 

限定のあじさいババヘラアイスを食べながら一度ホテルへ。

 

 

雲昌寺のあじさい、夜のライトアップ。

ダークなブルーライトに照らされ一気に雰囲気の変わる境内。

一日で2度美味しい男鹿半島梅雨のスポット。

(ただし入場料は2回分払っている)

 

 

紫陽花を見た帰りにずっと気になっていた「広栄堂」へ。

「生グソスタッフの募集中」の張り紙が目を引く。

生グレープフルーツソフト、略して生グソ。気にならないわけがない。

 

 

店頭の張り紙を見て(客側の略称だけでなく店公認なんだな)と「生グソひとつ」と注文すると、「はい、生グレープフルーツソフトひとつですね」と返ってくる。

久しぶりに顔が赤くなる体験をした。マスクがあってよかった笑

肝心の味の方だが、これがものすごく美味しい。

正直な所名前のインパクトで押しているのかと思っていたので嬉しい誤算だった。

 

 

にかほ市鳥海山から流れる「元滝伏流水」。

澄んだ水を横目に森林の中を歩くのはとても気持ちが良かった。

 

 

2022年の秋、雪が振り始めそうな頃…以前誓った「ここで自炊をする」という目的を果たしに私は再び玉川温泉へ訪れた。

 

 

キャンプブームが終わりかけた頃に火がついた私はちょうど外で自炊する道具を集めていた。

道中購入してきた鹿角グルメ「ホルモン幸楽」のホルモンと野菜を炒め、田沢湖ビールでいただく。

 

 

まだまだ夜は終わらない。

他のお客が電子レンジで簡単な調理をする中、少し恥ずかしさを覚えつつも台所を利用していた。

 

 

時期を迎える東北の味覚「せり」と比内地鶏の鍋をつっつきながら、雪の茅舎をいただいた。

 

 

翌朝、朝も早くから起きてまた料理場で音を立てていた。

 

 

土鍋であきたこまちを炊き、比内地鶏の親子丼とする。

正直な所、湯治客の食べる食事じゃないな…と心のなかで自嘲しながらもその弾力と脂の旨味に溺れた。

山奥の時間の流れが遅くなったような空間、極上の温泉と地物で作る料理…こういった生活が続けられたらな…と強く感じた旅であった。

 

 

この年も男鹿半島へすすきを見に来た。

昨年の寒風山での夕景は山に隠れてしまったため、「入道崎」に来てみたらまた美しい景色と出会うことが出来た。

 

 

翌朝も寒風山へ。

この日は雲ひとつない美しい空であった。

夜から朝へのグラデーションをバックに揺れるすすき。

この景色を見に来ることが出来てよかった。

 

 

揺れる穂が時間とともに輝きを変えてゆく。

この美しい景色と時間を、また、ここで。

 

 

2023年の梅雨の大雨で秋田市を中心に被害が広がり、今回紹介した店舗も何店か被害に合われているのを拝見して非常に心苦しい想いである。

一貫性がなく箇条書きのような日記となってしまったが、秋田の魅力が伝わればと思い今回この日記を書こうと思った。

私も少しでも復興に貢献できるよう、近いうちにまた秋田へ行こう。