せっかくのこの晴天、宿を出て海の方へ向かう。
「夕食の前に夕陽を見に行っていきます」と宿の方に伝えると、「長手岬がおすすめですよ」と教えていただいた。
「長手岬」は宿から2~3分なので、すぐに到着した。
普段の車旅であればここに腰を据えて日の入りを眺めたであろう。
ただ今回はバイク旅である。
折角教えてくれた宿の方には申し訳ないが、道中(お、ここは…)と思った場所に急いで移動する。
長手岬から北に少し行ったところ、「夫婦岩」の海岸。
ここの海岸は岩礁で波が抑えられ、水面は鏡のように空を映し出していた。
グローブとバッグを外し、アスファルトの縁に腰掛ける。
普段は人目を気にする私だが、この日は日曜日の夕方なのもあって周りには誰もいなく、お行儀悪く地面に胡座をかく。
近いようで遠い、初めての佐渡の地でバイクと一緒に美しい空を眺めた。
聞こえてくるのは遠くから静かに聞こえる波の音だけだった。
いつまでもこの時間が続いて欲しい。
しかし陽は一刻一刻と落ちていく。
そんな刹那的な夕景がたまらなく好きで。
空が朱く染まるにつれ、名前の通り夫婦のように寄り添う岩のシルエットも濃くなっていく。
何度も言うが、今回の旅でこんな良い天気に巡り合うとは思っていなかったのもあり、なんとも言えない感動が込み上げてくる。
いつまでも眺めていたかったが、夕食があるので宿に戻るとしよう。
宿に戻って夕食の時間。
初日の宿の量のインパクトが強すぎたが、丁寧で美味しい食事。
宿の目の前にそば畑があったのでもしかすると…と思っていたが、やはり出てきた。
香りの良い美味しいお蕎麦だった。
真野鶴酒造のお酒を頼み、食事を進めていく。
「旅立ちのとき」という名前に色々思うところがあり、なんだかグッと来た。
旅を始めたばかりの頃、旅館に泊まっては夕食の時間に、出されたものからすぐに食べてしまい…最後に出てくるご飯をお新香と味噌汁だけで食べてたなあなんてクスリと思い出す。
今はすっかり慣れたものだ。
ハチメの煮付けに目をつけ取っておき、ハチメ定食で締めよう。
佐渡は海鮮のイメージが強烈で忘れかけていたが、ここも新潟県。
お米もお酒ももちろんすごく美味しい。
この日の私以外の宿泊者は建設関係で仕事で泊まっている2名一組だけだったようで、現地の仕事の情報に耳を傾けながら食事するのが少し楽しかった。
2日目も夜は即落ちし、朝4時前に起床。
明るくなり始めた空を見ると天気はあまり良くなさそうだが、折角なので朝陽が見れそうな場所まで朝ツーといこう。
ちなみに今回泊まった宿は七浦にある「七浦荘」。
初日のお宿と比べてしまうと少し割高だが料理も美味しく、民宿というよりは綺麗な大きい民家にお邪魔しているような感覚で、そして立地も静かなところですごく良かった。
また佐渡に来る際には部屋が空いていたら是非この宿にお世話になりたい。
沢根町のあたりまで出てみると、日の出は見れなかったが雲の加減で真っ赤な朝焼けを見ることができた。
宿に戻ると、そば畑から見る東の空が美しい。
私の地元もそばの名所で見慣れているものの、世間一般的にそばの花はあまりメジャーではないのかもしれないが…白く小さく可憐な好きな花。
宿に戻り朝食。
夜は暗くて見えなかったが、海の見える景色のいい食事会場でゆっくりいただく。
朝も丁寧な朝食。
青い小鉢にはいった自家製のおかず味噌がたまらなかった。
夕食も朝食もごはんとお味噌汁はセルフサービス。
朝夕ともにお味噌汁の手が込んでいてすごく美味しかった。
セルフスタイルは(人の目がないと特に)つい食べすぎてしまう笑
宿を出て、3日目の旅が始まる。
と言っても帰りの小木港に向かいながら寄れなかった所を見ていく感じ。
スーパーのお土産売り場でへんじんもっこの「たまとろサラミ」を購入。
すごく気になっていた商品だが、インターネットで佐渡の商品を買おうとするとフェリー輸送料も増されて高価なのでこの機会に。
長浜荘の少し南にある「しまふうみ」という景色のいいカフェに来てみた。
パウンドケーキとアイスコーヒーを注文する。
犬のぬいぐるみを渡され、席において待っていてくださいというシステムが良かった。
いい年の人間が1人でぬいぐるみを持ってウロウロするのは客観的に見てなんだか面白くもあり。
帰りは行きと違う場所から1人…東側に出てまずはフェリー乗り場の場所を確認する。
小木港は隣にお土産屋と食堂が併設された施設があり、待望の「ブリカツ丼」を提供しているということでここで昼食をいただいていくことにした。
味付けが気になっていたが、醤油ベースの甘辛たれにくぐらせた…これは新潟名物タレカツ丼の亜種だ。
しかしブリのさっぱりと食感が、豚肉とは違ってまた良い。
デザートの冷凍柿も初の感覚ですごく美味しかった。
よく耳にする「おけさ柿」は佐渡のものだったのを知る。この旅は同じ新潟県でも知らなかったことをたくさん知ることができて楽しい。
初日に時間がなくパスした「岩首昇竜棚田」。
道中はSW-1でも切り返しが必要なくらいかなりの急カーブ&急勾配だらけだったので、初日に来ていたらてってれ氏のドラッグスターは登れなかったかもしれない…。
雲で霞んで境界線が見えづらかったが、高い場所から田圃と海を見下ろせるスポット。
稲刈り前の時期の風景を見ることができてよかった。
海沿いの道は本当に最高で。
この時は色々な感情を抱えて佐渡に来ていたので、1人で美しい海沿いの道を走るのは頭の中を空っぽにできて助かる。
初日に寄れなかった「万畳敷」にも来てみた。
少し雲が多くなってきてしまったが、ここも海が空を映す美しい風景が広がっている。
ここで見る夕日は格別…と下調べの際にたくさん情報を目にしていたので、次に佐渡に訪れた際にはここで日の入りを拝みたいものだ。
まだ少し時間に余裕があったので、初日に宿根木を歩いた際に気になっていたお店で一服していく。
抹茶氷にミルクを入れた抹茶氷カフェフロートに抹茶のパウンドケーキ。
店内も雰囲気のある良い喫茶。
満足した帰り道、この看板に心を奪われてしまう笑
本日3店目のカフェ「Cafe nano」で「佐渡牛乳と佐渡産もものかき氷」をいただいた。
この写真をアップした際「生肉ごはんかと思った」というリプを貰って笑ってしまった。
最近は旅の実況を上げていると、色んな方々から反応やコメントを頂けるようになった。
3年前にTwitterを始めたばかりのころはこうして人と絡んだり、ましてやお酒や旅までご一緒させていただくことになるとは思ってもいなかったな、と。
そんな旅の終わりの旅情を抱えつつ、帰りのフェリーに乗り込む。
私の帰りとともに青空も雲に覆われてゆく。
3日間、佐渡が私たちを歓迎してくれていたようにも感じる天気だった。
美しい風景をありがとう。
人がいる所で1人であまり眠ることはないのだが、流石に3日間バイクに乗りっぱなしなのと全日朝4時起きで活動していたのもあって眠りこけてしまった。
余談だが、この帰りのフェリーで「お客様の中にお医者様か看護師様はいらっしゃいませんでしょうか」というアナウンスが流れ、船内がざわついた。
そんなドラマのようなことが初のフェリー旅であるんだ…と不思議な感覚を感じながら、直江津港に到着し…家まで60kmほど走らせ無事帰宅。
そんなこんなで、初のフェリー旅であり初の離島を地元・新潟の佐渡で経験した3日間だった。
距離にしてみれば近いが金銭面では遠めの佐渡は…新しい発見ばかりですごく感動したし、また来たいと思った。
本当にフェリー代だけがネックだが、すごく良いところなので興味を惹かれた方は是非佐渡へ訪れていただきたい。
私はすでにまた佐渡へ行く予定を立てている。
次は、黄色い花が咲き乱れる時期に。